非接触型ICカードの特徴や仕組みとは?普及した背景も解説
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ICカード認証
- 2023.10.31
CONTENTS この記事でわかること
交通系ICカードをはじめ、日常的に非接触型ICカードを利用する機会は増えています。しかし、非接触型ICカードが広く普及した背景や、使用している技術を理解している方は少ないのではないでしょうか。
今回の記事では、非接触型ICカードの成り立ちや仕組み・規格について解説します。また、日本と海外の違いも説明するので、海外旅行や出張の予定がある方も参考にしてください。
ICカードの成り立ち
以前は、キャッシュカードやクレジットカードなどを中心に、磁気カードが主流でした。しかし、近年利用する機会が増えたのはICカードです。なぜICカードが主流となったのか、流れを解説します。
セキュリティ面で不安が大きかった磁気カード
磁気カードとは、顧客情報やポイント数などのデータを記憶させる、磁気テープを貼りつけたカードを指します。情報が磁気ストライプの中に直接転写されています。
磁気カードのメリットは、カード本体の安さです。一方で、セキュリティ性が不安視されてきました。磁気ストライプは「スキミング」と呼ばれるデータ情報の盗難に弱く、抜き取られた情報を元に偽造カードが作成され、不正利用されたケースもあります。
一方、ICカードは暗号化された状態で情報をICチップに保存しているため、スキミングされにくい特徴があります。また、磁気カードのように磁気の影響を受けにくいのも特徴です。セキュリティ性の高さと記憶容量の大きさから、ICカードが普及しました。
ICカードと磁気カードの相違点
ICカードと磁気カードの違いには、以下のような点が挙げられます。
磁気カード | ICカード | |
---|---|---|
データ容量 | 小さい | 大きい |
カード内での情報処理 | できない | CPU内蔵なら可能 |
データ記憶部分 | 磁気ストライプ | ICチップ |
メンテナンス | クリーニングが必要 | 容易 |
ICチップはコストがかかるため、使用場面によっては、磁気カードの方が選ばれます。使用する目的・必要とされるセキュリティ性などから、ICカードと磁気カードを使い分けるとよいでしょう。
クレジットカードなど、セキュリティ性の高さを求められるカードでは、ICチップ付きが主流になっています。
2種類のICカード|接触型・非接触型
ICカードには、接触型・非接触型の2種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
接触型 | 非接触型 | |
---|---|---|
データの読み取り・書き込み | リーダー/ライターへの接触が必要 | リーダー/ライターに近づけるだけで読み書き可能 |
ICチップの位置 | カードの表面 | カードの内部 |
カードの耐久性 | 比較的弱い | 強い |
接触型・非接触型の最大の違いは、情報の読み取り・書き込み方法です。
接触型はカードリーダー/ライターに差し込む必要があり、かざすだけでは情報の伝達はできません。よりセキュリティ性の高さを求められる、クレジットカード・キャッシュカードなどで用いられます。
非接触型は、カードリーダー/ライターに近づけるだけで情報の伝達が可能です。交通系ICカード・電子マネーなどで使用されています。
非接触型ICカードの特徴
接触型ICカードに比べ、かざすだけでデータ伝達ができる非接触型ICカードは利便性が高く、使用されるシーンが増えています。非接触型ICカードについて、構造・仕組み・規格をさらに詳しく解説します。
カードの構造と情報伝達の仕組み
非接触型ICカードは、内部にICチップ・アンテナが内蔵されています。接触型ICカードのようにICチップがむき出しになっていないため、破損や摩耗しにくい・デザインの自由度が高いのがメリットです。
電池は内蔵されていませんが、カードリーダー/ライターが発する電磁波にカードをかざせば、交流電圧が誘起されます。ICカード内で直流電圧に変換され、ICチップが作動する仕組みです。
また、カード内のアンテナコイルに電流が流れると磁界が発生し、かざしたカードリーダー/ライター側のアンテナコイルに影響を与え、情報の伝達ができるようになります。
ICカードとカードリーダー/ライターの通信可能距離は、電磁波の強さによって異なるため注意が必要です。距離が離れるほど、強力な電磁波が必要になります。
通信方式による3つの規格
非接触型ICカードは、伝送距離によって密着型・近接型・近傍型・遠隔型の4つに分けられます。一般的な非接触型ICカードに採用されているのは近接型で、通信方式の違いにより、さらにType-A・Type-B・FeliCa(Type-F)の3つの規格に分けられます。
通信方式が異なると、使用できるカードリーダー/ライターも異なるため、注意が必要です。
3つのタイプについて、それぞれ特徴を解説します。
Type-A
Type-Aは、オランダのフィリップ社が開発しました。世界中に広く普及しており、特にMIFARE(マイフェア)が有名です。
低機能ではありますが、低コストでの生産が可能です。日本では入退室管理カード・タバコの自動販売機で使用するtaspoなどで使用されています。
Type-B
Type-Bは、アメリカのモトローラ社が開発しました。セキュリティ性の高さが特徴で、コストも高めです。
日本では、マイナンバーカード・住基カード・IC運転免許証・キャッシュカード・デジタルチケットなどで使用されています。
FeliCa(Type-F)
FeliCa(Type-F)は、日本のソニー株式会社が開発しました。日本で最も知名度が高く、通信速度・処理速度の速さが特徴です。
日本では、交通系ICカード・会員証・入退室管理カード・電子マネーカード・スマートフォンのおサイフケータイなどで使用されています。
国内外における非接触型ICカードの相違点
国内外を問わず、非接触型ICカードはどんどん普及しています。しかし、日本と海外では異なる点もあるため、詳しく確認しましょう。
海外ではキャッシュレス決済の普及率が高い
海外の一部では、日本以上にキャッシュレス決済が広がっています。一般社団法人キャッシュレス推進協議会が発表した「キャッシュレス・ロードマップ2023」によると、2021年の海外でのキャッシュレス決済比率は以下の通りです。
韓国 | 95.3% |
中国 | 83.8% |
オーストラリア | 72.8% |
英国 | 65.1% |
シンガポール | 63.8% |
カナダ | 63.6% |
米国 | 53.2% |
フランス | 50.4% |
スウェーデン | 46.6% |
ドイツ | 22.2% |
日本の比率は2021年の段階で32.5%で、政府は2025年までに40%到達を目標としています。
海外では、非接触対応マークがついたクレジットカードによるタッチ決済が多いといわれています。そのため、インバウンド対策として、日本でもクレジットカードのタッチ決済に対応できる端末を取り入れる店舗が増えました。
海外の都市によっては、乗り物のキャッシュレス化が進められています。都市に暮らす人だけでなく、旅行者・出張者にとっても、自分が持っているカードで決済ができれば慣れない切符を買う必要がなく、利便性が高いと注目されています。
国内外で主流になっている規格の相違点
海外ではType-A・Type-Bが主流ですが、日本の主流はFeliCaです。同じNFC(Near Field Communication)と呼ばれる技術を用いていますが、それぞれ規格が異なる点に注意が必要です。
FeliCaには、国際規格であるType-A・Bとの互換性がありません。そのため、FeliCaを使用している交通系ICカード・電子マネーなどは、海外では利用できるシーンが限られます。海外に出かける際は、普段利用している非接触型ICカードの規格に注意しましょう。
一方で、VISAやマスターカードなどのタッチ決済は国際規格のNFCを利用しているため、日本・海外の両方で利用できる可能性が高いです。また、近年では国際規格とFeliCa両方を利用できるカードも存在します。
非接触型ICカードを破損させないためには
非接触型ICカードは、接触型ICカードのようにICチップが表面に取り付けられていないため、破損しにくいといわれます。しかし、カードやデータを破損させないために、以下の点に注意して使いましょう。
- 複数のカードを重ねて使用しない
- カードを曲げたり、強い衝撃を与えたりしない
- 高温多湿の場所に置かない
- ぬらさない
- 高周波・静電気・放射線・電磁波の影響がある場所に置かない
非接触型ICカードを重ねて利用すると、カード同士が干渉し合い通信機能が低下する可能性があります。複数のカードを持つ際は、分けて収納すると安心です。
加えて、カードを曲げると、内蔵されているICチップだけでなくアンテナが破損する可能性があります。カードを曲げないのはもちろん、落としたり圧迫したりしないよう注意しましょう。
また、非接触型ICカードのなかには、磁気ストライプが付いたものもあります。磁気ストライプに磁石などを近づけるとデータが破損する可能性があるため、あわせて注意しましょう。スマートフォンのケースに収納する場合、留め具に磁石を利用していないか確認してください。
今後も多機能化していく非接触型ICカード
ICカードには接触型・非接触型の2種類があると紹介しましたが、2つの特徴を併せ持つデュアルインターフェイスカードも登場しています。
また、よりセキュリティ性を高めるために、生体認証機能を搭載したカードも誕生しました。指紋認証センサーを搭載したクレジットカードは、カードの表面に指紋認証エリアがあります。指紋を当て、本人と認証されれば決済が可能です。
指紋情報はカード内にのみ保管されるため、サーバでの情報保持の必要がなく、指紋情報が漏えいする可能性は低いといえます。また、決済時に暗証番号の入力が不要になる・決済時間が短縮できるといったメリットもあります。
生体認証を取り入れれば、クレジットカードの不正利用を防ぐ効果も期待できるでしょう。マルチアプリケーションに対応しているICカードカードを入退室管理に利用する際も、高機能なカードを使用すればセキュリティ性を高められます。
非接触型ICカードは業務効率化にも有効
非接触型ICカードはマルチアプリケーションに対応しているため、従業員が日常的に使用しているカードを、そのまま業務に活用できる可能性があります。活用例として、次のようなものがあります。
- 入退室管理
- 勤怠管理
- パソコンへのログイン認証
入退室・勤怠システムへの打刻に利用すると、管理コストの削減・不正打刻防止などのメリットが期待できるでしょう。また、新たにカードを用意する必要がないため、導入費用も抑えられます。
従業員にとっても、普段使っているカードを利用すれば新しいシステムを導入する際の負担は少ないでしょう。
条件によって最適なシステムが異なるため、どの製品を選べばよいかわからない方や詳細を知りたい方は、メーカーに問い合わせる方法もあります。専門知識をもったスタッフが相談にのってくれるでしょう。
アートでは、ICカードや生体認証など多彩なリーダー対応の入退室管理システム「X-LINE」をご用意しておりますので、ぜひご確認ください。
※「FeliCa」は、ソニー株式会社の登録商標です。
※「MIFARE」は、NXP B.V.の登録商標です。
Q&A
Q.磁気カードよりICカードが普及したのはなぜですか?
A.磁気カードはスキミングによる情報の盗難など、セキュリティ性に不安があるとされました。そのため、よりセキュリティ性の高いICカードの普及が広がりました。
Q.非接触型ICカードにはどのような種類がありますか?
A.非接触型ICカードは、伝送距離によって密着型・近接型・近傍型・遠隔型の4タイプにわけられます。一般的に使われているのは近接型で、通信方式によってさらにType-A・Type-B・FeliCa(Type-F)の3つの規格があります。
アートの入退室管理システム「X-LINE」
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ポイント1
FeliCa・MIFAREⓇに対応したリーダー
ポイント2
ICカード・テンキー・生体認証などさまざまな認証方式を組み合わせ可能
ポイント3
共連れ検出や2名同時認証などセキュリティ機能も充実