ICカードの接触型・非接触型の違いとは?主流となるタイプを解説
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ICカード認証
- 2023.10.17
CONTENTS この記事でわかること
出勤時に使う交通系ICカードをはじめ、ICカードの出番は年々増え続けています。しかし、日頃何気なくICカードを使っているものの、接触型・非接触型といった種類や仕組みについてよく知らない方も多いでしょう。
今回の記事では、ICカードの仕組みや接触型・非接触型といった種類について解説します。特に主流となっている非接触型ICカードについて詳しく紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
ICカードの仕組みとは
ICカードとは、IC(集積回路)を内蔵しているカードを指します。磁気カードと同型で、次のようなメリットがあります。
- セキュリティ性が高い
- 記憶容量が大きい
- マルチアプリケーションに対応できる
また、CPUを内蔵しているタイプであれば、カード内での情報処理が可能な点も磁気カードとは異なる点です。
磁気カードは、書き込まれているデータが簡単に読み取られてしまう恐れがあります。そのため、より安全性が高いICカードが広く普及するようになったのです。
ICカードは交通系ICカードのほか、オフィスの入退室管理・学生証や運転免許証などの身分証明書・電子決済などで広く活用されています。
ICカードの種類|接触型・非接触型
ICカードは、接触型・非接触型の2種類です。また、接触型の端子と、非接触型のアンテナを兼ね備えたデュアルインターフェイスICカードも誕生しました。
接触型・非接触型の特徴を解説します。
接触型はカードリーダーへの挿入が必要
接触型ICカードは、表面にICチップが組み込まれています。専用のカードリーダー/ライターが必須で、ICチップに直に接点をもって通電・通信する必要があります。
キャッシュカード・クレジットカードなど、より高いセキュリティ性が求められる場面で用いられるケースが多いタイプです。
使用する際は、ICチップを確実にカードリーダー/ライターにセットする必要があり、情報の読み取り・書き込みは比較的難しいといえます。また、カードの表面にICチップが組み込まれているため、デザインの自由度が低い点も特徴です。加えて、表面が汚れると動作不良を起こす可能性があります。
非接触型はかざすだけで読み取り可能
非接触型ICカードは、内部にICチップとともにアンテナとなるコイルが内蔵されています。カードリーダー/ライターの磁界にカードをかざすと無線通信でデータの伝達が行われます。
非接触型は、カードリーダー/ライターに直接触れさせる必要がないため、接触型より摩耗や損傷を受けにくいタイプです。交通系ICカード・運転免許証・プリペイドカードなどで使われています。
カードをカードリーダー/ライターに近づけるだけで情報交換が可能なため、情報の読み取り・書き込みが容易です。また、表面にICチップが露出していないため、汚れや湿気に強く、デザインの自由度が高いのも特徴です。
また、非接触型ICカードを使った決済は、決済手続きの効率化・レジ混雑の解消といったメリットがあり、導入する店舗が増えています。
非接触型ICカードの構造・仕組み
非接触型ICカードは、ICチップ・アンテナコイル・カード基材で構成されています。ICカード自体に電池は搭載されていません。
ICチップに保存されているデータの伝達で用いられるのは、無線通信の技術です。カードに電池を内蔵していなくても、カードリーダー/ライター側の電磁波にカードをかざせば、カード内のアンテナコイルに交流電圧が誘起されます。その後カード内で直流電圧に変換され、ICチップが作動する仕組みです。
また、カード内のアンテナコイルに電流が流れると、磁界が発生します。この磁界がカードリーダー/ライター側のアンテナコイルに影響を与え、情報のやりとりができるようになります。
財布やケースにカードを入れたままでもデータのやりとりが可能なため、都度カードを取り出す必要がなくスムーズです。
非接触型ICカードの種類・規格
非接触型ICカードには、複数の種類・規格があります。主なタイプについて、特徴を解説します。
伝送距離の違いによる4つのタイプ
非接触型ICカードは電波が飛ぶ距離によって、4つのタイプに分けられます。
密着型(Close coupling ) | ・通信距離は2mmまで ・カードリーダー/ライターに完全に接触させる必要はないが軽く触れる程度の距離まで近づける必要がある ・国際標準規格ISO/IEC10536 で規定されている |
近接型(Proximity) | ・通信距離は約10cmまで ・国際標準規格ISO/IEC14443で規定されている |
近傍型(Vicinity) | ・通信距離は約70cmまで ・国際標準規格ISO15693で規定されている |
遠隔型 | ・通信距離は70cm以上 ・国際基準規格での規定はない |
近傍型・遠隔型は電波を飛ばすための電源が必要です。また、密着型はカードリーダー/ライターにかなり近づける必要があります。一般的な非接触型ICカードには、最も使い勝手のよい近接型が採用されています。
主流となる近接型の3つのタイプ
非接触型ICカードの主流である近接型には、Type-A・Type-B・FeliCaの3つがあります。同じ近接型ではありますが、3タイプの違いは通信方式です。
それぞれの特徴や、使用されているシーンについて解説します。
広く普及しているType-A
オランダのフィリップ社が開発した規格で、世界中に広く普及しています。特にMIFARE(マイフェア)が有名です。
搭載しているのがメモリのみのため、低機能ではありますが低コストでの生産が可能で、使い捨てのテレフォンカードとして普及していました。一方で、プロトコルが高速処理向きではない、通信速度が上げられないなどの点がデメリットです。
海外では、クレジットカードのタッチ決済で使用されています。日本ではオフィスの入退室管理カード・タバコの自動販売機で使用するtaspoなどで使用されています。
セキュリティ性の高いType-B
アメリカのモトローラ社が開発した規格で、セキュリティの高さが特徴です。
VISAが開発した「VISA payWave(ビザ ペイウェーブ)」、マスターカードが開発した「PayPass(ペイパス)」に搭載されています。日本では、マイナンバーカード・住基カード・IC運転免許証・キャッシュカード・デジタルチケットなどに使用されています。
セキュリティ性のほか、通信速度の高速化が可能といったメリットもありますが、反面コストが高めな点がデメリットです。
国内で最も使用されているFeliCa
日本のソニー株式会社が開発した規格で、国内で最も知名度が高いタイプです。Type-Fとも呼ばれます。
通信速度・処理速度の速さが特徴で、カードリーダー/ライターにかざすと約0.1秒でデータの読み書きが可能です。
かつてType-Cとして標準化を行っていましたが、承認されなかったため、適合規格はありません。しかし、2003年にFeliCaで使用している通信方式が、ISO/IEC 18092として承認されました。
交通系ICカードの大半に採用されているほか、会員証・入退室管理・電子マネーカード・スマートフォンのおサイフケータイなどでも使用されています。
一般的なFeliCa Standardのほか、廉価版であるFeliCa Lite-Sがあります。FeliCa Standardはマルチアプリケーション対応です。しかし、FeliCa Lite-Sはメモリ容量が少ないため、アプリケーションの設定は1つのみである点で異なります。
非接触型ICカードにおけるNFCとは
非接触型ICカードの仕組みを理解するには、NFC(Near Field Communication)についての知識があるとさらによいでしょう。どのような技術なのか解説します。
スマホやタグにも活用されている技術
NFCは近距離無線通信とも呼ばれ、無線通信規格の一つです。通信距離は約10cmで、非接触型ICカードの近接型が当てはまります。NFCに対応したICチップが組み込まれていれば使用でき、ICカード以外にも、スマートフォン・ICタグなどにおいても活用されています。
ICカードに用いられているのは、カードエミュレーション機能と呼ばれるものです。あらかじめ現金をチャージしておけば決済ができ、キャッシュレス決済に活用されています。
そのほか、リーダー/ライターとしての機能もあり、ICカードだけでなく専用のタグから情報を読み取れます。また、NFCの端末間通信はある程度端末同士を近づける必要があるため、セキュリティ性の高さも特徴の一つです。
NFCの技術を用いれば画像やデータを端末同士で共有でき、パスワードを使わずに周辺機器とのペアリングも可能です。近年では、IoT(Internet of Things)においてもNFCの技術が使用されています。
タイプごとの互換性に注意
非接触型ICカードの規格と同様、NFCにはType-A・Type-B・FeliCa(Type-F)とがあり、海外ではType-A・Bが主流になっています。一方、日本国内で主流となっているのはFeliCaです。すべてNFC技術を用いてはいますが、それぞれ規格が異なるため、注意が必要です。
FeliCaには、国際規格であるType-A・Bとの互換性がないため、海外ではFeliCaを使用した決済方法が利用できません。例えば、交通系ICカード・Edyといった電子マネーはFeliCaを使用しているため、海外では利用できるシーンが限られます。海外へ行く際は注意しましょう。
一方、VISAやマスターカードなどのタッチ決済は、国際規格のNFCを使用しているため、海外でも利用できます。近年では、国際規格とFeliCaの両方を利用できるICカードも誕生しました。
また、スマートフォンをはじめとする電子機器には「モバイル非接触IC通信マーク」と呼ばれるマークがついています。これはNFC対応機器であるとともに、NFC技術を用いて通信を行う際に「どこにかざせばよいか」を表しています。通信がうまくいかない時は、マークが記された場所をリーダー/ライターにかざしているか確認しましょう。
利用シーンが広がる非接触型ICカード
NFC技術がIoTに活用されるようになり、今後はデータのやりとりができる機器が増えていくと予想されます。同時に、キャッシュレス決済を利用する人も増え、NFC技術や非接触型ICカードの利用シーンはさらに拡大していくでしょう。
非接触型ICカード1枚で、キャッシュレス決済・入退室管理など、複数の場面に対応できます。複数店舗のポイントカードを1枚にまとめたり、スポーツジムなどの会員証として使用したりできます。
オフィスの入退室管理にICカードを活用すれば、新たにカードを用意する必要がないため、導入費用を抑えられるでしょう。できるだけ費用を抑えて入退室管理を導入したい場合、ICカードを利用できる製品を検討してください。
アートでは、ICカードや生体認証など多彩なリーダー対応の入退室管理システム「X-LINE」をご用意しておりますので、ぜひご確認ください。
※「FeliCa」は、ソニー株式会社の登録商標です。
※「MIFARE」は、NXP B.V.の登録商標です。
Q&A
Q.ICカードにはどのような種類がありますか?
A.ICカードには接触型・非接触型の2種類があります。特に非接触型ICカードを使った決済はメリットが多く、導入する店舗が増えています。
Q.非接触型ICカードにはどのような種類がありますか?
A.非接触型ICカードには、国際基準規格であるType-A・Type-B、国内で広く普及しているFeliCa(Type-F)の3種類があります。国際規格とFeliCaには互換性がないため、注意が必要です。
アートの入退室管理システム「X-LINE」
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ポイント1
ICカード・テンキー・生体認証などさまざまな認証方式を組み合わせ可能
ポイント2
Felica・MIFAREⓇに対応したリーダー
ポイント3
動線管理や電源管理が可能